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書籍詳細

タイトル
源氏物語(現代語訳)
サブタイトル
ダイジェスト版
編著役者名
竹本 哲子 著
あらすじ
人間の愛、喜び、悲しみ、悩みをリアルに描いた源氏物語のダイジェスト版(現代語訳)。紫の上をはじめ、チャート式の女性の登場人物紹介や当時の信仰に関する解説などもあり、様々な視点から楽しめる。40年以上にわたり「源氏物語研究会」を主宰する著者の卓越した知識と、強い思いによって生まれた珠玉の一冊。
判型/頁数
新書判/228頁
価格
1,260円(本体価格 1,200円)/ 在庫 
isbn
4-924706-31-0
出版日
1986.11.05

6 末摘花 すえつむはな

源氏の君はいつまでも夕顔の君が忘れられない。あの人のように可憐な人柄の女はいないかと探しておられた。そんな折、太輔命婦という源氏のもう一人の乳母の娘から、親に先立たれて心細く暮らしておられる、故常陸親王の末娘の話をお聞きになった。気の毒なことと心ひかれた源氏は、大変乗り気になっていろいろお尋ねになる。命婦は困って「器量のことなどはよく存じませんが、琴のことをお弾きになる」と申し上げた。

十六夜の月の頃、わびしく風情のある雰囲気のなかで、姫が奏でる一節を源氏は聴いた。命婦が取りはからったのである。そんな時には、あまり上手でなくても音楽はロマンチックに響く。落胆してわびしく暮らす身分の高い姫君……。源氏は胸がいっぱいになった。きっと素敵な人に違いない。

源氏は夢中になっている。話を聞きつけた頭中将と競争で手紙を届けれられるのだが、姫君からは一言のお返事もない。そうなると源氏は意地になる。源氏は命婦を責めてお邸に入れてもらった。

姫は「ただお話を聞いているだけでいいから」と言われて承諾されたので、源氏が何を言っても返事をなさらない。源氏は腹立ちまぎれに襖を開けて契りを結んでしまった。突然のことで姫は無我夢中でおられたが、可憐でも哀れでもなく、砂をつかむように索漠としていた。源氏はひどく失望して、そそくさと帰ってしまわれた。

夢と現実はくい違うものではあるが、これはあまりにひどい。源氏は命婦の止めるのもきかず行動した自分の軽率さを今更のように悔いておられた。それでもあんなにかわいそうな人をこのまま捨てるわけにもいかない。何とかしてあげようと源氏は思うのだった。

再び訪ねてみると古びれて壊れかかった几帳や簾が目につく。年をとった女達が貧しい食べ物を食べながら「寒い、寒い」と泣きごとを言っている。荒れ果てた邸に姫君一人を残して帰るのはしのびない。その夜、源氏はお泊まりになった。

翌朝、雪景色の縁に出てこの姫の姿を初めて見た。祈るような気持ちでそっと眺めると、どうだろう。胴長で、なよやかとか、すらりとかいう感じからはほど遠い。お鼻にはぎょっとして目をみはった。まるで象のように長くたれ、先の方が赤くなっている。顔は青白く、しかもとても長い。額はおでこ、体はやせすぎてぎすぎすと骨ばっている。ショックで息もつけないほどであった。

これほどまでに悪いところが揃っているとは珍しい。ただ、髪の毛だけは長くて見事だった。毛皮の衣を着ておられたが、あの青白いやせた体で暖房もない部屋に住んでおられるのだから、仕方がないだろう。源氏は痛ましく思いながらも、あまりに珍しい服装にあきれてしまわれた。

この姫君は父宮から大変可愛がられて育った。つき合ってみると、純情で少しも悪気がない。不器用なりに一所懸命なのである。時々、吹き出したくなるような贈り物や、珍妙な和歌を詠んで源氏におくってくる。憎めない人柄であった。源氏は社会事業をするようなつもりでこの姫君に、流行の新しい衣装などを贈るのだった。

「なつかしき色ともなしに何にこの 末つむ花を袖にっふれけむ」
という歌に源氏の苦笑している顔が想像される。

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