書籍詳細
- タイトル
- 「つつしみ」の法則
- サブタイトル
- 利他的遺伝子が地球を救う
- 村上 和雄 共著/中野 良子 共著
- あらすじ
- 鳥インフルエンザもBSEも、サムシング・グレート(大自然の見えざる力)による警告である。生命科学の世界的泰斗と国際NGOのリーダーが、自然の摂理を壊し続けている傲慢な人類に警鐘を鳴らし、太古の昔より日本人が育んできた「他を利する心」の大切さをあらためて説く。
- 判型/頁数
- 四六判/248頁
- 価格
- 1,600円(本体価格 1,524円)/ 在庫 あり
- isbn
- 4_86050_029_6
- 出版日
- 2006.4.01
はじめに
生ある限り、一刻も休むことなく鼓動を刻む心臓。とどまることなく流れる赤い血液、大気より酸素を取り入れ続ける肺臓。いかなる精密機械よりも精密に作られた生体。これはまさに、生命が営む奇跡です。
私は、その生命の原資である遺伝子の秘密を解明するための学究生活に半生の多くを捧げてきました。その間には、あまりにも多くの生の神秘に遭遇しました。研究者冥利とも言えることです。そのことには、至福を感じております。
そして、ハイテク技術の長足の進歩もあいまって、これまで謎に閉ざされていたダークマターが次々と科学の光に照射されるようになってきました。しかし、一つの謎が解ければ、また、新たな謎の存在に直面する。そんな繰り返しが、私の専門分野における研究活動の毎日ではありました。
ゴールは、いまなお遠くにかすんでいます。人知をもっては容易に解明できない生命の謎、宇宙の神秘に少しでも迫り、一歩一歩前進しようとの思いにいよいよ駆られる今日この頃ではあります。
しかし、いかに科学が進歩しても、それに等しいだけ人類は幸福に近づいているであろうか、そんな空虚感、無力感もつい胸に去来します。
前大戦での手痛い敗戦からみごとに再起し、世界有数の富める社会、便利で不足のない社会を私どもは築き上げてきたつもりでおりました。しかし、そこで手に入れたものは何であったのか? そんな、悔恨の念にも駆られないではありません。
モラルは地に落ち、政治も、社会も、教育もいまや荒廃しています。そして、愚かしくも、人間は自らの生存を脅かすような環境を、自らの手で作り上げてしまいました。
そんな時、万葉舎より、この対談の企画のお話を持ちかけられました。私は、迷うことなく応じました。これはまさに、私がかねて語りたかった一大テーマであったからです。
そして、すばらしき友と邂逅することにもなりました。対談相手である、中野良子さんです。中野さんは、OISCAという国際的非営利団体の総裁を務められ、献身的な奉仕活動、啓蒙活動を通じて、日本にとどまらず世界が抱える難問の解決に長らく挑戦を続けてこられた方です。
これまで、全く異なる道を歩みながら、出会った中野さんの中には「同志」を見出す思いでありました。生命、宇宙の神秘に対し、限りなく敬虔な思いを抱かれ、謙虚な生き方を希求される方です。麗しい日本文化の伝承者でもあります。
中野さんとの対談を通じ、私は、私どもを生かしてくれている宇宙の偉大な力に対し、感謝の念をいや増しに深めざるを得ない思いでおります。この気持ちを、ぜひ、読者の皆さんにも共有していただきたいと思います。それが、今、究極的な危機に直面する地球上で、私どもがそれを克服していくための第一歩となるものと信ずるからです。
そして、もう一度見直していただきたいものが日本の底力です。私は、日本人の力の源、精神の源とも言える、イネの生命の秘密を解明することに熱情を注いできました。その私が、現代社会の退廃を目の当たりにし、中野さんとともに行き着く結論は、この日本再生です。
高度に発達した科学、世界に冠たる技術力に加え、古来、自然とみごとなまでに調和し、和やかに共生してきた日本人の知恵、私どもの血肉と化しているバイタリティの復活は、混迷する現代社会を救済する力だと考えます。日本には、その精神が、その力があったのです。ぜひ、それを思い出し、呼び覚ましてほしいと願います。そして、二一世紀は、世界にとっても日本の力が生かされる世紀となることを信じてやみません。
二〇〇六年 月吉日
村上 和雄