書籍詳細
- タイトル
- アルコール依存症回復へのアプローチ
- サブタイトル
- 地域相談から始まる道づくり
- 長谷川 行雄 / 世良 守行 編
- あらすじ
- アルコール依存症の相談から治療−回復までを地域の立場から書いた決定版。市町村・保健所・医療機関で相談を始められた方、酒害相談に携わる回復者、アルコール依存症の問題を抱えている家族にとって必読の書です。
- 判型/頁数
- A5判/254頁
- 価格
- 1,995円(本体価格 1,900円)/ 在庫 あり
- isbn
- 4_86050_009_1
- 出版日
- 2003.7.30
はじめに
酒の歴史は太古にさかのぼることができます。ギリシャ神話の中には酒の神バッカスが登場しますし、我が国では天の岩戸の前で酒盛りをした話や、日本書紀にはヤマタノオロチに酒を飲ませて退治した話が登場します。現代でも飲酒はドラマや映画、小説の中にしばしば描かれます。このように一般大衆化している酒も健康問題を引き起こしたり、交通事故や離婚や虐待といった社会問題の原因ともなります。
我が国の飲酒を取り巻く社会状況を見ると、平成12年の酒類販売(消費)数量は約952万キロリットルです。昭和62年のアルコール乱用による社会的費用は6兆6374億円と推定され、同年の我が国の医療費の6.9%がアルコール乱用に関した疾患に使用されたと推定されています。平成8年に実施された調査では我が国の成人における飲酒人口は6500万人と推定されており、そのうち236万人が大量飲酒者(毎日純アルコールにして150ミリリットル、日本酒に換算すると灼く合を飲む人)とすいていされています。また平成13年度中の交通事故による死亡原因のうち4.0%が酒酔い運転によるものです。
近年アルコール依存症以外にも多くのアディクション(嗜癖)が話題となり、対応方法が検討されています。アルコール問題に関わるとその他のアディクションの人たちと出会います。アルコール依存症者が断酒後にギャンブルや薬物依存に陥ったり、家族が共依存関係にあったり、家族内で虐待問題が生じたり、摂食障害となったり、ひきこもり現象を生じさせるということはしばしばです。このように一人のアルコール依存症者の周囲には多くのアディクション傾向をもつ人が存在することがあります。アルコール依存症と他のアディクションとは密接な関係にあり切り離せないものです。ですからアルコール依存症と関わるということはその他の嗜癖と関わるということを意味します。もとよりアルコール依存症もアディクションの一つであり、他のアディクションと関わり方が大きく変わるわけではありません。現在のアディクションへの関わり方は最も古くから対応方法が検討されてきたアルコール依存症が基本となっていると言えます。本書ではこのようなアディクション問題の代表としてアルコール依存症を取り上げました。
本書ではプロローグの他に相談編、治療編、回復編を配しました。アルコール問題は、家庭、職場、近隣などで問題が表面化して初めて事例化します。問題の相談を受けた相談機関は、家族教育や疾病および治療に関する情報提供、ケースマネジメントを行います。相談が適切に行われると多くのアルコール依存症者は専門機関で治療を受けることになります。その後、自助グループの例会などへ参加しながら回復への道を歩むことになります。アルコール問題は相談機関、医療機関、回復のための機関や集団がそれぞれの役割を適切に果たすことによって問題の解決に至ります。したがって本書では相談から治療、回復まで一貫した流れを重視しています。
プロローグではアルコール問題一般に見られるような架空事例を物語として示し、その物語を解説する形で実際のアルコール問題解決に向けての対処方法を説明しています。
相談編では相談機関の特徴から始まり相談の手順や家族へのアプローチ、さらには最近中注目されている企業でのアルコール対策について触れました。従来からアルコール問題の解決には相談の重要さが指摘されてきましたが、相談について詳しく述べた書物はあまり多くありませんでした。本書ではアルコール問題での相談の重要さを考慮して、読者の参考となるように多くのページを割きました。
治療編ではアルコール依存症という病気の解説はもちろんのこと、近年のアルコール依存症治療の中心が入院治療から通院治療へと移行しつつあることを踏まえて入院治療と平行して通院治療での諸側面も紹介しました。またこの編では単にアルコール依存症の解説や治療に留まらず、再飲酒への対応や依存対症の移行についても紹介しています。アルコール依存症の治療では単に病気と対峙するだけでは解決できない多くの問題を抱えていますが、本書では中でも重要な家族の心と子どもへの影響も取り上げました。
回復編では編の冒頭でアルコール依存症からの回復について説明をしています。一般に病気は治療の終了とともに回復へのアプローチは終了しますが、アルコール依存症の場合には治療の終了がそのまま回復へのアプローチの終了とはなりません。回復にはさらに長い道程が続きます。さらに、アルコール依存症からの回復に大きな役割を果たしている自助グループについて紹介し、自助グループが効果的な理由を解説しました。近年の老人保健施設などの増加に伴い、入所施設でのアルコール問題を最後に取り上げました。そして編の最後に座談会を入れました。座談会ではアルコール依存症からの回復途上者や家族、医療関係者の生の声をお届けすることで、読者の方々にも大いに参考にして頂きたいと考えています。
平成15年6月吉日
長谷川 行夫
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